会社員として働いていて、一番しんどいのは人間関係だ。
仕事内容がキツくても、人間関係さえ良ければなんとかなる。逆に、仕事がラクでも人間関係が悪ければ、毎日が地獄になる。
とくにHSP気質があると、人間関係のダメージが致命傷になりやすい。
感受性が高いから、ちょっとした衝突や軋轢で大ダメージを受ける。相手の表情の変化、声のトーン、場の空気。全部キャッチしてしまう。
しかもHSS型HSPの場合、厄介な点がある。
HSS型の行動力があるぶん、おかしいと思ったことをつい正面からぶつけてしまう傾向があることだ。
正論をストレートにぶつけて、相手との関係が悪化する。悪化した空気を敏感にキャッチして、自分がダメージを受ける。
アクセルとブレーキの同時踏みが、人間関係でも起きるのだ。
そんな私が、ここ最近ようやく「会社の人間関係がラクになる方法」を掴みかけている。
それが「相手の生存戦略を見抜く」ということだ。
上から降ってくる隕石をそのまま現場にスルーパスする上司
具体例から話す。
私の上司のひとり、仮にAさんとしよう。
Aさんはそこそこ長い間、会社にいる。役職もそれなりだ。しかし、部下からの評判がすこぶる悪い。
理由はシンプルだ。上役からの指示をなにも調整せずに、そのまま現場に降ろしてくるのだ。
上層部が取引先と話をして「うちに任せてください」と軽いノリで約束してくる。それが中間管理職であるAさんを経由して、現場に降りてくる。
「◯◯を使った商品開発を進めて」と。
そもそもの話、そんなに簡単に新商品なんてできない。
OEMでラベル貼り替えの商品であれば、短期間で開発はできるだろう。しかし、そういう案件ではない。
それに「◯◯を使った」という時点で、大きな制約が生まれている。
それに、求められているのは「ニーズがあり、かつ差別化された商品開発」だ。軽いノリで作れるものではない。
上層部からすると、取引先に「いい格好」をしたいのだろうが、現場からすれば隕石が降ってきたようなものだ。
こっちはこっちでKPIを追っている。目標に向かって行動計画を立てて、タスクに落とし込んで動いている。そこにイレギュラーの隕石が降ってくる。
「これ差し込まれたら、今追ってるKPIに影響が出ます。それでもいいんですか?」
そう伝えても「なんとかならない?」で返ってくる。
本来、中間管理職の役割は、経営層が掲げるビジョンや戦略を具体的な行動に落とし込み、チーム全体で目標達成させることだ。
掲げている目標達成を阻害する内容なのであれば、上層部と部下の間に立って調整する必要が出てくる。
上からの指示をそのまま流すのではなく、現場の状況を踏まえて合意形成を取ったうえで現場に落としていかなければいけない。
Aさんは、それをやらない。スルーパスのように、上からの指示をそのまま現場にパスする。
「なんでこの人はこうなんだ」の正体
入社してしばらくは、Aさんのやり方に強い不満を持っていた。
「なんで上にきちんと状況を説明しないんだろう」「なんで現場を守ろうとしないんだろう」「中間管理職としての役割を果たしていないじゃないか」
この考え自体、間違ってはいないと思う。
しかし、最近は以前ほど腹は立たなくなっている。
入社して3年が経ち、いろいろな人から話を聞いていくなかで、ようやくAさんの行動の理由が見えてきたからだ。
Aさんも、昔はいろいろ提案してチャレンジするタイプだったらしい。
しかし、上役がまったく話を聞いてくれなかった。企画は全部通らない。やりたいことができない。叱責を受ける。
それが長期間にわたって積み重なった結果「こんな苦労をするくらいなら、うまく立ち回っていたほうがいい」という着地になったのだろう。
悪意があってやっているわけではない。どうしようもなくなった結果、この立ち回りを選ばざるを得なかった。
Aさんにとっては、これが「生存戦略」なのだ。
そう気づいた瞬間、Aさんに対する感情が変わった。
HSS型HSPが陥りやすい「正論の罠」
HSS型HSPは、物事の本質を見抜く力がある。
「これはおかしい」「こうすべきだ」という判断が速い。
しかし、ここで立ち止まって考えてみてほしい。その正しさをそのまま相手にぶつけてしまうと、かえって自分が消耗する。
正論をぶつける→相手が反発する→関係が悪化する→悪化した空気をHSPの感受性が全力でキャッチする→自分が傷つく。
この悪循環に心当たりはないだろうか。
問題は正論そのものではない。正論の「届け方」だ。
相手が重視しているポイントを踏まえずに正しさだけをぶつけると、相手にとっては「うるさいやつ」でしかない。
一時的に自分の主張が通ったとしても、中長期で見れば大きなデメリットだ。「こいつ嫌なやつだ」と思われてしまったら、その後の仕事がやりづらくなる。
では、どうすればいいのか。
正論を手放すのではなく、相手の生存戦略を踏まえたうえで、伝え方を変えるのだ。
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相手の「動機」が見えると、伝え方が変わる
相手の生存戦略が見えると、アプローチがまったく変わる。
Aさんの場合、重視しているのは「波風を立てないこと」「自分の立場を守ること」だ。
であれば、こちらが提案するときも、Aさんにとってリスクが低い形で提案すればいい。
「これをやると、成果が出しやすくなります」ではなく「これだと、上から突っ込まれるリスクがあります」のほうが刺さる可能性がある。
出世に興味がない人に「出世に繋がりますよ」と言っても響かない。「面倒を避けられますよ」のほうが動機に合致する。
人によって、メリットに感じるポイントはまったく違う。
成果を出して出世したい人には「成果」で伝える。面倒を避けたい人には「リスク回避」で伝える。承認欲求が強い人には「感謝」で伝える。
相手の動機を読み、それに合わせた伝え方をする。これだけで、物事が動く確率は大きく変わる。
仮説でいい。正解は分からなくていい
もちろん、相手の生存戦略を完璧に読み解くことは不可能だ。本人にしか分からない部分もある。
しかし、仮説を立てることはできる。
日頃の言動を観察する。どんなときに機嫌がいいか。どんなときに嫌そうな顔をするか。なにを重視していて、なにに興味がないか。
その傾向が読めてくると、確度の高い打ち手が見えてくる。
100%の正解にはたどり着けない。でも、仮説を持っているだけでアプローチの精度は上がる。
HSS型HSPの感受性を「武器」として使う
HSS型HSPは感受性が高いぶん、相手の動機や感情を察知する能力も高い。
この能力を「人の感情を拾いすぎてしんどい」というデメリットとしてだけ捉えるのではなく「相手の生存戦略を読み解く武器」として使う。
会社にはいろんな人がいる。いろんな動機で、いろんな生存戦略で、それぞれが生き延びようとしている。
その多様性を「おかしい」と切り捨てるのではなく「この人はこういう戦略で生きているんだな」と受け止める。
そのうえで、自分はどう立ち回るかを考える。
自分の正しさを押しつけず、相手の動機に合わせた伝え方をする。
しんどさの裏側にある強みを、戦略的に活用する。
それだけで、会社という戦場での生存確率は大きく変わるはずだ。
